
浮気症の旦那さんや、過去に感染したことがある性病によって、妊婦とその赤ちゃんにはどのような影響があるか考えたことはあるかしら。
この記事では、妊娠中に性感染症になると、お母さんと赤ちゃんにどのような影響があるのかを解説するわ。
なかにはおなかの赤ちゃんに大きな影響をきたす性病もあるの。
妊活中の女性や、これから妊娠を考える女性は、性病にならないようにしっかり知識をもっておくことが大切よ。
感染数が多い性感染症
1. クラミジア
クラミジアとは?
性器クラミジア感染症とは、クラミジアトラコマチスという細菌による感染症のこと。
症状が非常に軽いので自覚症状がないことが多く、放置されやすい。
そのため、感染が長期化して不妊症や子宮外妊娠の原因になります。
近年、若年者を中心に感染者が多く、性感染症の中でも一番多い感染症です。
症状は?
女性では、性交後2-3週間より水っぽい透明のおりものが増えます。
女性の性器クラミジア感染症は、お腹の中にも入り込み、子宮付属器炎(卵管や卵巣の炎症)や骨盤内の炎症も起こすと言われ、不妊症の原因にもなります。
症状がなく放置され、妊娠を望む時になかなか妊娠せず、クラミジアの検査をすると感染していたことがわかることもあります。
口を使ったセックス(オーラルセックス)によるのどの感染も多いのが現状です。
また、クラミジアは淋菌などの他の性感染症も一緒にかかることが多く、クラミジアと診断された場合は、他の性感染症の検査も同時に行うことが必要です。
母体や赤ちゃんへの影響は?
頻度はまれですが、妊娠中に感染すると流産や早産を引き起こします。
赤ちゃんへの影響は、感染者の10%に出産の時に産道(膣)を通して赤ちゃんに感染します。
感染した赤ちゃんのうちの25-50%の赤ちゃんに新生児結膜炎が発症し、10-20%の赤ちゃんに新生児肺炎が発症すると言われています。
女性の性器クラミジア感染症は、男性に比べて症状が軽いものの、合併症や後遺症が非常に複雑なのが特徴です。
参考文献
1. 医療情報科研究所編集(2009)『病気が見える』vol.10 産科(第2版)メディックメディア(P180-181).
2. 川名 尚 , 三鴨 廣繁(2009)「7.婦人科感染症」,『日本産科婦人科学会雑誌』61(5), N-132 , 公益社団法人日本産科婦人科学会.
2. ヘルペス
ヘルペスとは?
単純ヘルペスウィルス1型(口の周囲に症状が出る)、2型(外陰部に症状が出る)を病原体とする性感染症です。
クラミジアの次に感染数が多い性感染症です。
症状は?
女性では、性交後3-7日間より外陰部に痛みがある水ぶくれ、または左右が対称な潰瘍(ただれ)が現れます。
排尿がしにくくなったり、歩きにくくなったりします。
母体や赤ちゃんへの影響は?
出産の時に産道(膣)を通して赤ちゃんに感染します。
母体が初感染の場合は、外陰部の潰瘍(ただれ)からのウィルスの排泄量が多いため、約50%の赤ちゃんが新生児ヘルペスを発症すると言われています。
新生児ヘルペスでは、予後が悪い(経過が良くない)ため、帝王切開で出産します。
《参考文献》
- 1. 医療情報科研究所編集(2009)『病気が見える』vol.10 産科(第2版)メディックメディア(P175)
- 2. 医療情報科研究所編集(2008)『病気が見える』vol.9 婦人科(第3版)メディックメディア(P70-71)
3. 淋菌
淋菌とは?
淋菌による細菌感染症で、男性では感染して数日間後に尿道の炎症を起こし、排尿の時の痛みや尿道からうみが出てきます。
女性では子宮頸管炎、尿道の炎症を起こしますが、症状が軽いために放置されやすく、不妊や子宮外妊娠の原因となることがあります。
クラミジア、ヘルペスの次に感染数が多い性感染症です。
症状は?
女性では、性交後2日から数日後より、匂いが強くうみのようなのおりものが増えます。外陰部のかゆみなどの症状も出ます。
母体や赤ちゃんへの影響は?
妊娠中は、流産や早産、産後の子宮内膜の炎症を起こす可能性があります。
赤ちゃんへの影響は、生まれてくる時に産道で感染して、化膿性結膜炎(目の病気)を起こすことがあります。
《参考文献》
1. 医療情報科研究所編集(2009)『病気が見える』vol.10 産科(第2版)メディックメディア(P179)
2. 医療情報科研究所編集(2008)『病気が見える』vol.9 婦人科(第3版)メディックメディア(P66)
3. 厚生労働省ホームページ
B. リスクが高い性感染症
1. HIV
HIVとは?
レトロウィルスの一種であるヒト免疫不全ウィルス(HIV)による性感染症です。
HIV感染者がAIDSを発症するまでには長期間かかるのが特徴です。
日本は先進国の中で、HIV感染者数やAIDS発症者の増加率が高いのが現状です。
症状は?
感染初期は、ほとんど無症状です。数年から10数年かかって、発熱、下痢、体重減少などのAIDS関連症候群の症状が出てきます。
母体や赤ちゃんへの影響は?
赤ちゃんへの影響は、出産の時が問題になります。
陣痛の時に胎盤を通して感染します。
その他、出産の時に産道(膣)を通して赤ちゃんに感染します。母乳でも感染するため、ミルクでの授乳を勧められています。
《参考文献》
1. 医療情報科研究所編集(2009)『病気が見える』vol.10 産科(第2版)メディックメディア(P178).
2. 梅毒
梅毒とは?
梅毒は、梅毒トレポネーマによって起こる細菌感染症です。
症状は?
① 第1期梅毒
最初の症状が現れるまでにかかる日数は10-90日、平均21日です。
女性では、外陰部、子宮頚部に硬性下疳(円く硬いしこりで、痛みがないのが特徴)が現れます。
最初は、盛り上がった発疹ですが、すぐに潰瘍 (えぐれたような傷)になります。この部分から出る浸出液(汁のようなもの)はたくさんの細菌を含んでいます。
感染後6週間頃に、足のつけ根のリンパ節に痛みのない腫れが現れます。
硬性下疳は、1-5週間で現れますが、そのうちに消えてしまいます。しかし、治った訳ではなく、適切な治療を受けなけれ梅毒の第2期に進んでしまいます。
② 第2期梅毒
体の一部や多くの部位に痛みのない発疹ができます。
あせものような発疹のこともあり、イボやニキビのようなものが全身や陰部にできることもあり、ベトべトとした白い斑点として粘膜に現れることもあります。
発疹が様々な形で出ること、さらに他の病気も同じような発疹が出ることから、診断が難しいことがあります。発疹は、通常2-6週間で消えてしまいます。
発疹以外にも発熱、リンパ節の腫れ、のどの痛み、脱毛、頭痛、体重減少、筋肉痛、疲労などが出てくることもあります。
梅毒の1期、2期の症状が出ている間は、時に他の人に感染させやすいと言われています。
③ 第3期梅毒
感染してから約3年から10年までの時期で、大きめのしこり(結節性梅毒疹やゴム腫などといわれます)ができます。
④ 第4期梅毒
感染してから約10年の時期で、心臓、血管、神経、目などに重い障害が出ます。
母体や赤ちゃんへの影響は?
胎盤を通して赤ちゃんに感染し、先天梅毒を引き起こします。
母体中の梅毒トレポネーマの量が多いほど赤ちゃんへの感染リスクは高くなります。
母体が梅毒の1期や2期で治療していない場合、50%以上の赤ちゃんが出まれた後に先天性梅毒を発症すると言われています。
妊娠13週までの梅毒は赤ちゃんへの感染率は低いということ、梅毒は治療に良く反応することから、妊娠初期に検査をして早く治療を開始する必要があります。
先天性梅毒
妊婦健診の初期に検査が行われているため、現在は先天性梅毒はほとんどありませんが、下記のような症状があります。
先天梅毒の赤ちゃんには様々な症状が出ます。例えば、老人様顔貌(老人のように見える顔)、鼻炎、梅毒性天疱瘡(梅毒による水ぶくれ)、難聴、貧血などの症状があります。
生まれたときには、健康な赤ちゃんのように見えますが、数週間から数か月くらいでこのような症状が出ると言われています。
《参考文献》
1. 医療情報科研究所編集(2009)『病気が見える』vol.10 産科(第2版)メディックメディア(P179).
2. 川名 尚 , 三鴨 廣繁(2009)「7.婦人科感染症」,『日本産科婦人科学会雑誌』61(5), N-127-129 , 公益社団法人日本産科婦人科学会.